ミリタリージャケットM-65とM-51、サイズ感と年代判別方法

皆さんはミリタリージャケットと聞いてどの様な形を思い浮かべますか?
近年は所謂モッズコートをはじめ、若い年齢層や女性からの支持も多く集めています。
私もM-51、M-65フィッシュテールパーカはとても大好きなアイテムです。
ヴィンテージデニムからスキニーパンツ、スーツにまで合う。
これ程完成されたコートが他にあるでしょうか?
しかも製造されたのは今から50年以上も前です。
こちらのモッズコートの着こなしについてはQuadrophenia(邦題:さらば青春の光)が秀絶です。
(画像引用元:『Quadrophenia』1979 British drama film)
さて、本記事では『タフ』『男臭い』とされているフィールドジャケット、その中でも40年以上アメリカ軍の現用戦闘服であった傑作M-65フィールドジャケットに特にフォーカスを当てていきたいと思います。
ちなみにこの記事は、ミリタリージャケットに興味を持った初心者の方に向けて書いています。
例えば古着屋さんに行って漠然とカッコいいと思ったけれど、それがどの種類で他にどんなモデルがあるか判らない方や、モッズコートはなんとなく知ってはいるけれど、今いちフィールドジャケットとの違いが判らない方に向けてです。
この記事を読んでいただければ、各モデルの違い・年代の判別の仕方が判るようになります!
また、つい男臭くなりすぎてしまいがちなフィールドジャケットですが、
今っぽく着こなすサイズ感や合わせ方についても著者なりの見解で提案していきますので、サイズ等迷われている方は是非参考にしてみてくださいね。
※尚、この記事は初心者向けに書いておりますので、「それは知ってるよ」という部分も多分に出てくると思います。その場合、下記CONTENTSよりお知りになりたい箇所へジャンプして読んでみてくださいね。
CONTENTS
- フィッシュテールパーカとフィールドジャケットの違い
- モッズコートM-51とM-65
- モッズコートのサイズ感
- M-65フィールドジャケットとは
- M-65フィールドジャケットのサイズ感
- M-65各年代の違い・判別方法
- M-65フィールドジャケット1stモデル
- M-65フィールドジャケット2ndモデル
- M-65フィールドジャケット3rdモデル
- M-65フィールドジャケット4thモデル
- まとめ
1.フィッシュテールパーカとフィールドジャケットの違い
ミリタリーウェアの中でも特に人気のフィールドジャケットとフィッシュテールパーカ。
しかし、これがしばしば混乱を招いています。
何故かと言いますと、このM-51やM-65といったモデル名ですが、
フィールドジャケットとフィッシュテールパーカ、両方に存在するんですね。
先に紹介した映画Quadrophenianのようにモッズコートと一般的に言われるものは、アメリカ陸軍の野戦用のコートのことで、ミルスペック(米軍規格タグ)により規定された名称は「PARKA SHELL M-1951」になります。
ジャケットやコートではなく、パーカというカテゴリーとなっており、モッズパーカと呼ばれたりもします。
ちなみに、フィッシュテールと呼ばれている由来は、裾が魚の尾びれの形に似ているという意味で、下に向かうに連れて幅が狭まり前後で丈の長さが違うことからです。これは後にご紹介するM-65パーカも同じディテールです。
2.モッズコートM-51とM-65
(画像引用元:『Wikipedia』 M51 )
こちらのM-51は、1960年代頃のイギリスで細身のスーツに身を包んだモッズと呼ばれる若者たちが、多数のミラーで装飾されたスクーターに乗る際、大事にしているスーツを汚れから守るために羽織りはじめたことで流行したと言われています。
現在では玉数も減り日本でも価格が高騰していますが、当時は米軍の任務完了後デッドストックが大量にイギリスに渡ったことがきっかけでモッズに愛用されました。この辺りの時代背景も面白いですよね。
そして、いよいよ1965年、M-51にアップデートが施されます。そして誕生したのが、『M-65』です。このM-65もフィールドジャケットとフィッシュテールパーカ、両方が存在します。
先に紹介したM-51パーカとM-65パーカの最大の違いはボディと一体型であったフードが、着脱式となったことです。
また肩のエポレットも省略され、肩を落として着るようなシルエットになります。
ビッグシルエットが台頭している現代によりハマりやすい形と言えると思います。
(画像引用元:『Wikipedia』 M65 )
この二つが現在、所謂『モッズコート』『モッズパーカ』と呼ばれるものです。
多くの有名ブランドもこの呼称でサンプリングしたモデルをリリースしていますね。
しかしモッズ全盛が1960年代のイギリスという時代背景を考えると、本物のモッズコート、モッズパーカと呼べるものはM-51パーカのみという事になります。
『本物のモッズ』に拘る方は是非PARKA SHELL M-1951の実物をお探しになってみては如何でしょうか。
3.モッズコートのサイズ感
モッズコートのサイズ感はかなり大きめです。アメリカ製でフィールドジャケットの上に羽織るように作られているので、普段選んでいるサイズ表記より2サイズは大きいと思っていいと思います。
現在、ビッグシルエットが流行していますが、それでも著者は普段着ているサイズの2サイズ下をお勧めいたします。(例:176cm Sサイズ)
理由としてフィッシュテールパーカは着丈が長いです。製造年数や個体にもよりますが、Sサイズでもテールの長さは凡そ105cmを超えます。
私の感覚として身長-着丈=80cm前後が扱いやすいと思います。フィッシュテールパーカは前着丈と後着丈で10cm程度差がありますので、175cm前後の場合、Sサイズがベストと思います。
もちろん人によって体型も違いますから一概には言えませんが、肩幅や身幅もかなり大きめに作られていますから、着丈に注意して舵を取ってあげれば自然と今っぽいボックス型のシルエットが作れるかと思いますよ。
4.M-65フィールドジャケットとは
COAT MANS FIELD M-65 2nd
M-65フィールドジャケットとは、丈の短かい前開きのアメリカ軍の野戦用ジャケットです。
フィッシュテールパーカのインナーに着用することも出来ます。
M-41、M-43、M-50、M-51と続いてきたフィールドジャケットの完成型となったのがM-65(COAT MANS FIELD M-65)です。
※ミルスペックではJACKETではなく『COAT』という名称になります。
1965年から2008年まで、40年以上アメリカ軍の現用戦闘服であったM-65は正に傑作と言って良いと思います。
M-65の立ち襟、チンストラップ
M-51からのもっとも大きな変更点は、防寒対策を考慮して採用されたスタンドカラーです。スタンドカラーの中には簡易フードが装備されています。
ベルクロで留められるチンストラップ付き。これは現代的に考えるとAシルエットで着たりする際に嬉しいディテールです。
袖口のベルクロと三角フラップ
M-51までついていた袖口カフスやボタンはなくなり、ベルクロを使ったデザインに変更になります。
これはボタンが引っかかって取れてたり、袖口の擦り切れを防ぐためかと思われます。
また、手の甲部保護用の三角のフラップ状の折り込み生地がつき、袖の内側に折り込みマジックテープで固定できるようになっています。
※三角フラップは1999年頃以降省略されています。
ドローストリングとアクションプリーツ
裾と腰の部分にはドローストリングと呼ばれる紐が取付けられフィット性を高めています。
これを引っ張ることで身頃を体に密着させ、ばたつきを抑えたり、風の侵入を防ぐことができるようになっています。
背中の両肩下にはアクションプリーツをつけ動きやすくなりました。
この様なM-65フィールドジャケットの機能性・実用性の完成度の高さは他国のフィールドジャケット開発にも大きな影響を与えました。
また、そのデザイン性の高さはファッション業界にも大きく影響しており、よりファッション性を高めたり、タウンユースに適したシルエットにしたりと、多くの有名ブランドから毎年のようにサンプリングされたジャケットがリリースされています。
もちろん、軍放出品のオリジナル(実物)や民間品なども流通しており、正にこれこそが『ミリタリージャケット』と言っても過言ではないでしょう。
5.M-65フィールドジャケットのサイズ感
M-65フィールドジャケットのサイズ表記は身幅のサイズと着丈のサイズ表記の組み合わせになります。
胸囲に合わせてX-Small、Small、Medium、Large、X-Largeの5種類、身長に合わせて各々のサイズ毎にX-Short、Short、Regular、Longの4種類があります。
(例 MEDIUM REGULAR 胸囲94-104cm 身長170-180cm)
※ライナーのサイズはX-Short-X-Small、X-Short-Small、X-Short-Medium、X-Small、Small、Medium、Large、X-Largeの8種類です。
但しアメリカ軍のサイズ基準なので、Mediumといっても、日本人からすると大きめです。
感覚として、普段選んでいるサイズの1サイズ以上は大きめかと思います。
ちなみに2ndまでは3rd以降よりも大きめな作りなので、ここも注意が必要です。
身幅と着丈について次の表にまとめてみます。
身幅
X-SMALL | 74-84cm |
SMALL | 84-94cm |
MEDIUM | 94-104cm |
LARGE | 104-114cm |
X-LARGE | 114-124cm |
着丈
X-SHORT | 身長 150-160cm |
SHORT | 身長 160-170cm |
REGULAR | 身長 170-180cm |
LONG | 身長 180-190cm |
お勧めとしましては、180cm以下であればSHORT丈がお勧めです。
これを基準に、身幅は体型に合わせて選んでもらえれば綺麗に着こなせると思います。
アームや肩口などゆったり作られているので、身幅は普段のサイズを選んであげれば、良い感じのボックスシルエットで着こなせると思いますよ。
6.M-65各年代の違い・判別方法
M-65は誕生以降、年代によって何度も機能性・実用性を求めてマイナーチェンジを繰り返していきます。
マイナーチェンジは大きく分けて4つあり1st(ファースト)、2nd(セカンド)、3rd(サード)、4th(フォース)と呼ばれています。
それぞれの特徴的なディテールを解説していきますね。
7.M-65フィールドジャケット1stモデル
COAT MANS FIELD M-65 1st
(画像引用元:『AnoLuck』 ONLINE STORE )
1965~1966年のモデルになります。
1st(初期型)では肩に付いているエポレットがありません。
当初M-51では付いていたのですが、後継されたM-65の初期型では無くなっております。
しかし、理由はわかりませんがたった1年でデザインが変更されエポレットは復活します。
短命の1stモデルは市場に出てくる玉数は少なく、かなり希少なモデルとなっており価格も高めです。
稀に後期モデルを意図的に肩のエポレットとボタンを外すカスタムををした物も見かけます。
8.M-65フィールドジャケット2ndモデル
(画像引用元:『Taxi Driver』 1976 American psychological drama film)
(画像引用元:『Serpico』1973 American biographical crime film)
1966~1971年のモデルになります。
2ndモデルからは肩にエポレットが付けられ、3rdモデルとの違いは襟・フロントのzipがアルミジップとなっております。
初期のものはチンストラップがボディと同じ生地になります。1960年代後期より別生地に変わります。また、1970年に入って、袖口のマチが無くなります。
この2ndモデルは、映画SERPICOのアル・パチーノやTAXI DRIVERでロバート・デニーロが着用しており、大変人気があります。
私も、やはり一番好きなモデルは2ndで、セルピコの若干ルーズな着こなしは大好きで参考にしていました。小物の合わせ方なども男臭すぎず良い感じと思います。
また、個人的にはアルミジップが何より好きなのと、それでいて1stよりも価格がリーズナブルな点・比較的玉数も豊富でshort丈も出てきやすい点もポイントです。

ちなみにライナーがグレー色のものもあります。所謂グレーライナー、グレライというやつです。
この裏地がグレーの個体は1968年の一年間のみと生産年数が少ないので希少とされています。
9.M-65フィールドジャケット3rdモデル
COAT MANS FIELD M-65 3rd(画像引用元:『JAM』 オンラインショップ )
2ndとの大きな違いはzipがアルミジップから真鍮(ブラス)ジップへと変更。
柔らかい金属であるアルミは耐久性や酸化すると開閉しづらくなるという問題からのようです。
このモデルはM-65の中でも72年から86年前後までと長く採用されていたモデルとなっており、比較的このモデルの物を見掛ける回数は多いのではないでしょうか。
期間も長いせいか、同じ3rdモデルでも細かな部分でいろいろな違いもあります。
10.M-65フィールドジャケット4thモデル
COAT MANS FIELD M-65 4th
(画像引用元:『AnoLuck』 ONLINE STORE )
OD無地のM-65フィールドジャケット最終型になります。
4thモデルはzipが3rdのブラスからプラスチック製へと変更しております。
これは塩害の防止、軽量化、金属部の消音効果を期待して変更になりました。
ちなみに1985年頃のコントラクトの物から、ジッパーはブラス(真鍮)素材の物よりプラスティック素材の物に除々に仕様変更されており、変更の初期にはフロントがブラス、襟裏にプラスティックのジッパーが用いられた複合タイプも多く見られます。
11.まとめ
如何でしたでしょうか?
『男らしい』『無骨』、元々戦場をはじめとした過酷な環境で活動する兵士の為に開発された究極の実用品は、何れも用途やシーンを変え半世紀以上に渡って支持され続ける正に完成されたデザインです。
時代を超えて残ってきたものには、どの時代にも愛される魅力があります。
消費者のニーズに合っているかどうかという考え方は、一時的な流行にすぎません。
物事には流行り廃りがありますが、時を経ても愛され続けるものはあります。
それはトレンドを超越していくように思うのです。
私の好きな言葉で『不易流行』という言葉があります。
“いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。 また、新味を求めて変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であること。”
正に、これを地でいっているものがM-65の歴史のように思います。そして、我々リオーグもこうありたいと常々思っています。
現在、ReOrg JAPANでは、ミリタリーウェアに敬意を表しながらも全く新しい発想で、パターンから新ウェアのサンプルを作っています。
まだまだ製品化まで時間は掛かりますが、もしも興味を持っていただけたら、時々覗いていただけると嬉しいです。
長らく、お読み頂きありがとうございました。
追記:2020/10/11
上記のミリタリーウェアに敬意を表した新ウェア、クラウドファンディングMAKUAKEにて公開いたしました。
大変ご好評いただき即日完売いたしました。ご支援いただき本当にありがとうございます。
追加販売の予定についてですが、工場との調整・デリバリーを含めて検討させていただいている状況です。
追加の目途が立ちましたら、速やかにMAKUAKE活動レポート及びプロジェクトページにてご案内させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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